立替金とは関連会社などを含めた「得意取引先」・「仕入先」などの営業活動に関連する相手先や自社の「取締役」・「役員」・「従業員」に対して一時的に金銭の立替払いをした場合に経理上の処理として使用する勘定科目じゃ。
尚、会社によっては役員や従業員に対して行う立替金を区別しやすいように「役員従業員立替金」もしくは「従業員立替金」の科目を利用するケースがあるので覚えておくことじゃ。
※具体的な科目は会社で定めるルールによっても異なる為、自社の帳簿データを確認しておきましょう
■立替金の英語読み(会計用語)
Advance receivable
Advances paid
【決算書の表示区分】 | |
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損益計算書の勘定科目 PL(プロフィット&ロスステートメント) | 貸借対照表の勘定科目 BS(バランス・シート) |
立替金の仕訳は決算書(財務諸表)の中の貸借対照表に区分される勘定科目の一つです。
【勘定科目の区分】 | |
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資産 | |
負債 | |
純資産(資本) | |
収益 | |
費用 |
また、立替金は「資産の部」に仕訳区分される勘定科目です。
尚、立替金は性質上、一時的に金銭の立替を行なっているという解釈で扱われる勘定科目ですから、速やかに返済を受けるべき費用である為、「資産」の中でも1年以内に回収が可能としてみなされる「流動資産」として扱われます。
立替金は一般的な見識では立替金額が常識の範囲を超えて高額になることはありませんので貸借対照表に「立替金」として独立した科目で扱われることはありません。
その為、貸借対照表では「その他の流動資産」として幾つかの科目と合算して表示されているケースが大半です。
立替金は、原則として一時的な金銭の立替であるという前提を考慮して仕訳を行うべき勘定科目じゃ。
仕訳の際には立替金と性質が類似する「貸付金」や「未収入金」・「仮払金」などの科目が存在する為、仕訳の判断に迷うケースも多く出てくるはずじゃ。
しかし、前述した通り立替金はあくまで会社が一時的に金銭を融通しているという原則を考慮して仕訳を行うように意識する事が大切じゃ。
立替金の仕訳では、立替金と仮払金の違いが曖昧に感じるためにどちらの勘定科目を利用すべきかの仕訳に迷うケースがあります。
実際の現場での経理処理では、多くの場面でどちらの処理でも通用してしまうのが現状でもあるため極端に間違いがないように突き詰める必要もありませんが、一応の判断の目安は覚えておいて損はありません。
まず立替金と仮払金の違いを判断する最大の目安となるポイントは、対象となる金銭の支払いが「経費」として精算されるかどうかがポイントになります。
その費用が一般的な営業活動上の経費となる場合は原則として「仮払金」で処理することが基本です。
また経費としての観点の他にも、立替金は取引や営業活動などで発生した費用などを会社が仕入先や個人に代わって一時的に立替支払いを行うもの。
対して仮払金は取引や営業活動等で生じる可能性のある金銭を支給し、後に実費として発生した費用の「領収証」と「お釣り」を回収することで精算するという勘定科目の性質を判断の目安とする視点を持つ事も大切です。
全ての取引が対象となる訳ではありませんが、立替金は確定した金額の立替を行い、仮払金は事前に予想される金銭を受け取り実費がわからない段階でも一時的に経理処理する勘定科目と覚えておくと解りやすいかもしれません。
立替金は貸付金とは異なりますが、もし仮に立替金として処理した金銭の回収が困難であり立替金の返済が滞っている場合は、「貸付金」として処理すべきケースも出てきます。
立替金の仕訳について、金額と勘定科目をより具体的に設定した事例を見ながらチェックしていくとしよう。
会社や事業主が従業員に変わって立替える代表的なものは、「社会保険料」・「労働保険」の立替じゃろう。
尚、社会保険料の勘定科目は法定福利費となっておる。
社会保険料の一つである雇用保険料。この従業員の雇用保険料は前年度の給与の支給実績に基づいて算出されておる。
そして会社の負担分と従業員負担分の双方を合算した1年分の概算保険料を雇用主は従業員に代わって立替えして納めておるのが一般的な労働保険料の支払方法じゃ。
給与明細表に記載されている「雇用保険料」と記載されている項目は、雇用主が既に立て替えている分について、給与支払い時に差し引いて回収しておるという事なのじゃな。
①立替金の仕訳事例(雇用保険料) | |||
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雇用主負担分、従業員負担分の1年分の概算労働保険料(雇用保険)200万円を会社の普通貯金口座から支払った。その内、従業員負担分は18万円である。 | |||
借方科目 | 金額 | 貸方科目 | 金額 |
法定福利費 | 1,820,000円 | 普通貯金 | 2,000,000円 |
立替金 | 180,000円 | ||
事前に立替金で計上していた雇用保険料を毎月の給与支払い時に差し引いて回収した。 | |||
借方科目 | 金額 | 貸方科目 | 金額 |
給料手当 | 240,000円 | 普通貯金 | 236,000円 |
立替金 | 4,000円 |
この事例のケースでは会社が従業員に代わって概算の保険料を立替えしている為、法定福利費の一部を経理上の一時的な「立替金」として扱う事になっておる。
尚、法人や個人事業主が立替を行った場合は「借方」へ記載、立替金を回収した場合や支払いを受けた場合は「貸方」に記載するのじゃよ。
②立替金の仕訳事例(交際費) | |||
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親会社と子会社の役員が共通の得意先の接待を行い現金140,000円を支払った。この際、親会社が子会社の接待費用負担分である40,000円を立替えた。 | |||
借方科目 | 金額 | 貸方科目 | 金額 |
交際費 | 100,000円 | 現金 | 140,000円 |
立替金 | 40,000円 | ||
接待後日に子会社の接待費用負担分を現金で回収した。 | |||
借方科目 | 金額 | 貸方科目 | 金額 |
現金 | 40,000円 | 立替金 | 40,000円 |
③立替金の仕訳事例(福利厚生費) | |||
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社内旅行で発生した福利厚生費として現金で120万円支払った。しかし、120万円の内、16万円は役員の個人負担分の立替金である。 | |||
借方科目 | 金額 | 貸方科目 | 金額 |
福利厚生費 | 900,000円 | 現金 | 1,200,000円 |
立替金 | 300,000円 | ||
社員旅行費用の個人負担分を給与支払い時に差し引いて回収した。 | |||
借方科目 | 金額 | 貸方科目 | 金額 |
給料手当 | 800,000円 | 普通貯金 | 640,000円 |
立替金 | 160,000円 |