会社では商品の仕入や消耗品、備品を購入する際、また仕入れや販売を行う際に口座間を通じて金銭の授受が行われるのぉ。
近年ではネットバンキングが普及し、金融機関に出向くことなく事務所内でパソコンひとつで多くの取引を行う事も可能となった。
ここでは、この口座間取引を行う際に発生する「振込手数料」の仕訳について確認しておくとしよう。
尚、振込手数料は営業活動を行う上で必要となる費用であるため会社の経費として損金計上する事が可能となっておる。
■振込手数料の英語読み(会計用語)
transfer fee
bank transfer fee(銀行)
銀行や信用金庫などの金融機関を利用した振込手数料は原則として支払手数料科目を用いて仕分けされます。
【決算書の表示区分】 | |
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損益計算書の勘定科目 PL(プロフィット&ロスステートメント) | 貸借対照表の勘定科目 BS(バランス・シート) |
支払手数料の仕訳は決算書(財務諸表)の中の損益計算書に区分される勘定科目の一つです。
【勘定科目の区分】 | |
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資産 | |
負債 | |
純資産(資本) | |
収益 | |
費用 |
支払手数料の勘定は「費用の部」に区分される勘定科目です。
支払手数料は、税理士、司法書士などの「顧問料」や不動産仲介会社に支払う「仲介手数料」、商品代の支払いや事務所家賃の支払い等の銀行の「振込手数料」、業務委託料などの支払いの仕訳で処理される勘定科目です。
①事務所・店舗の家賃の振込手数料の仕訳例 | |||
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事務所の家賃120,000円をネットバンキング経由で銀行の口座から振り込んだ。その際の振込手数料は630円である。 | |||
借方科目 | 金額 | 貸方科目 | 金額 |
地代家賃 | 120,000円 | 普通貯金 | 120,630円 |
支払手数料 | 630円 | - | - |
②買掛金の振込手数料の仕訳例 | |||
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買掛金20万円を当社のみずほ銀行普通貯金口座から仕入先の三菱UFJ銀行普通貯金口座に振り込んだ。その際の振込手数料は864円である。尚、仕入先との取り決めにより振込手数料の負担は当社が負担する取り決めとなっている。 | |||
借方科目 | 金額 | 貸方科目 | 金額 |
買掛金 | 200,000円 | 普通貯金 | 200,864円 |
支払手数料 | 864円 | - | - |
振込手数料が当方負担の場合は「買掛金」と「振込手数料」の両方が当社普通貯金口座に記帳されます。
この場合は、買掛金と支払手数料は分けてそれぞれ仕訳する形となります。
では続いて解りやすいように全く同じケースで振込手数料が「先方負担」の取り決めとなっている場合の仕訳例を見てみましょう。
③先方負担の振込手数料の仕訳例 | |||
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仕入先との取り決めにより振込手数料の負担は先方が負担する取り決めとなっている。その為、買掛金20万円から振込手数料864円を差し引いた199,136円を当社のみずほ銀行普通貯金口座から仕入先の三菱UFJ銀行普通貯金口座に振り込んだ。 | |||
借方科目 | 金額 | 貸方科目 | 金額 |
買掛金 | 200,000円 | 普通貯金 | 200,000円 |
振込手数料が先方負担の場合は、取引先の仕訳で「売掛金199,136円」と「支払い手数料864円」の仕訳が行われます。
当方の普通貯金口座にも「買掛金」の支払いと「振込手数料」の金額が分けて記帳される形になりますが、振込手数料は先方負担であるためこの場合は、振込手数料を含めた金額200,000円を「買掛金」として仕訳する事になります。
実際の取引では振込手続きを行う以上、振込手数料は発生しておりますが、先方負担の場合は振込手数料として認識しないという事です。
では、もうお解りになると思いますが振込手数料を当方が負担する取り決めとなっている場合の売掛金回収時の仕訳方法についても仕訳事例を元に確認してみましょう。
④振込手数料込の売掛金回収時の仕訳例 | |||
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売掛金40万円の回収期日となり本日当社の普通貯金口座に振込手数料を差し引いた399,136円の入金を確認した。尚、仕入先との取り決めにより振込手数料(864円)の負担は当社が負担する取り決めとなっている。 | |||
借方科目 | 金額 | 貸方科目 | 金額 |
普通貯金 | 399,136円 | 売掛金 | 400,000円 |
支払手数料 | 864円 | - | - |
売掛金回収時に振込手数料が当方負担する取り決めとなっている場合は、普通貯金口座に振込手数料が差し引かれた金額が入金されることになります。
この場合は、「売掛金」と「実際に振り込まれた金額」の差額が「振込手数料」であることが解るため、その差額を「支払手数料」として仕訳する事になります。
振込手数料は先方が利用している金融機関と当方の金融機関が同じ場合は安価な手数料、また違う金融機関の場合は高くなるなど金融機関によって変化してくるものです。
その為、売掛金と入金額の差額が振込手数料となる点を把握しておくことで様々なケースに対応する事が可能となります。